ジョーティッシュを今よりも更に手探りで実践していた頃に
またとても面白い鑑定希望者の方が目に留まった
この女性は相当に独特な家庭環境に生まれ
逆行木星の奇跡的な保護により高威力な二大凶星の抑圧を深い素養と意欲に昇華できている
水瓶座ラグナで悪意のない水星が2室で減衰して6室支配の月がコンジャンクションし
危険な「6室対8室」の絡みが起きつつも水星は減衰し「パラーシャラの例外則」になり
ヴァルゴッタマの木星は高揚できる蟹座へ逆行しその2室へ厚い吉意のアスペクトを起こす
この2室の配置の妙というのが彼女の持ち味であり
水星はアスペクトバックを起こし
月から見たラグナにそのまま住んで
水星自身が水星を高揚させる星座の支配星であるために
弱いながらもニーチャ・バンガも生じており
アスペクトしてくる木星が
高揚の星座へ逆行したヴァルゴッタマという極大の吉意でその月と水星を守り
常に彼女の心持ちを「前向きなもどかしさ」で満たしている
そして一見して注意を惹かれるのは
12室山羊座の特異過ぎるほどの惑星集中であり
ラグナロードとラージャ・ヨーガ・カーラカの金星と3室10室支配の火星が絡み合い
高揚惑星と定座のラグナロードとヨーガ・カーラカが
途方もなく高密度なヨーガの熱源を無意識下の12室で生み出している
彼女と対話した限り
この今生における一大事業とはどうやらコンテンポラリーダンスのようである
彼女のラーシはまた稀有な奇遇があり
両親は共に金星で表意される人物であり金星の住んだ部屋の所見を両親が体現するため
互いの長所と短所が矛盾せず家柄としての品性が顕著に立ち現れてくる特徴を帯びる
おそらくはご両親共々かなり厳格で誉れ高い階級の職業に就いた「ハイソな」方々である
山羊座の惑星集中は
母親を指す4室から見た9室目であり父親を指す9室からは4室目となる
ほぼ間違いなくその地場で相当に名高い進学校の教師か何かとして精励するご両親だろう
倫理道徳を含んだ美的観念の辛辣さをどうにか木星が和らげてはいるがなおも高尚だ
母親の3室には木星が逆行して高揚するように働き
9室の修験者か何かのような熱烈な覚悟を示す配置と対向し
物腰の柔らかさの中に容赦の無い審美眼を秘めている様が思い浮かばれる
その母親の10室である水瓶座には太陽が住んでディグバラとなりアスペクトバックする
太陽がアスペクトを返すその位置(4室)には木星が住むためスーリヤ・グル・ヨーガが生じ
「対等平等を下地とした理論と実践」といった自覚的態度で振舞う姿を映しており
哲学色のある学問を縦横に語らうことがこの母親の職業のようである
女性ながら指導者的自負心に富んでいて澄み渡った理性で生きる賢人だと言える
一方で父親も質実で堅固な学究心が常態そのままになっている頑健ぶりで恐れ入る
木星が11室に住んでいるその配置自体が権威と実力を指し示しているが
その木星が10室へと逆行し4室山羊座と対向して高揚するように振舞う
天秤座をラグナとすると木星は凶意の3室6室支配だが
10室でその木星が高揚する配置は
「試行錯誤を経験し続けることが目的」と言えるくらいの根気強く明朗な性格を現す
対向した4室山羊座がまさにこの父親の日頃の粉骨砕身な厳しい実務を映している
即ち
4室に住んでラージャ・ヨーガのラグナロードに対し
定座で更にラージャ・ヨーガの土星と高揚の火星という
殺人的な緊張感と闘いながらの熱心な取り組み方は
「研究」の8室をラグナロードが同時に支配してディスポジターとコンジャンクションし
ラグナ対5室やラグナ対7室のラージャ・ヨーガと
ラグナ対2室や2室対5室のダーナ・ヨーガといった
凄まじい創意の熱力学で本人を蒸気機関のようにさせた高馬力な志向性そのものを指す
おそらくは
トリコーナとケンドラが二大凶星で示されてヨーガを幾重にも組んで4室に住み
それが永続的な重い忍耐を意味する山羊座である上に
そこに8室(追求・反復)を支配するラグナロードの金星がコンジャンクションし
凶星がテクニカル・プラネット(諸般の技術に転用可能な理科系実学の惑星)であることから
明らかに理系の応用系学問(物理学や化学)の専門分野で修学し続ける名うての有識者である
これら卓越し切った極意の高みから人の世を見つめる両親の下に生まれた彼女の個性は
やはり両親各々のラグナから5室目と11室目が必ず絡んでいる配置で示される
母親のラグナである牡牛座から見た5室支配の水星は11室魚座に在り
父親のラグナに当たる天秤座から見た5室には11室支配の太陽が住む
5室11室が相関するため彼らの実子である彼女は後に必ず頭角を現す一個の才能なのである
それ故に彼女の深遠かつ複雑怪奇とも言える先天的個性は
言外の強さを迸らせている12室の惑星集中にその神秘の核心がある
ラグナロードは物質性を排した感応力の12室で定座し
あらゆる能動性を意味する3室10室支配の火星は高揚し
コンジャンクションした金星は芸術の象意をより深めるラージャ・ヨーガ・カーラカである
その配置を両隣でラーフと太陽が挟むため
何かに触発されて突然もどかしい思いが頭をもたげ呼吸困難のようになる抑圧感が伴う
第六感的に心象風景がイメージされたり心の奥で不思議なフレーズが聞こえたりして
それを必死に理解しようとなぞり続け「表現したくてたまらなくなる」といった様子である
12室でラグナ対9室やラグナ対10室や9室対10室のラージャ・ヨーガが炎のように猛り
創発的な情熱が心と身体を駆け巡っているのが見て取れる
ここで重要なのが2室の配置である
2室は「声や容姿」という象意のハウスだが
そこで5室8室支配の水星が減衰してアスペクトバックする配置は
「雑然たる言葉の量塊を切削し煮沸する」純化のプロセスを指しており
言葉にできていた様態から言葉以上の臨界点へと知覚を抽送する行為を指す
水星には6室支配の月がコンジャンクションしており
「むしろ “ 分かる ” ことを “ 分からなく ” したい」のである
その2室魚座の配置に木星が逆行の仮想アスペクトバックを与えてくることで
遊び半分な慰め事で終わらずに難解で底の見えない営為へと成長する機序が叶う
こうして2室における強い足掻きが量的な経験を経て質的な成長へと高まり
12室で奥深く煮えたぎった熱の放射となって「ダンスアクト」へと昇華していると言える
声と歌唱を意味する2室で機能的吉星は減衰し機能的凶星の月がコンジャンクションして
言葉でその思いの丈を叫ぼうにも声だけでは全く事足りずもどかしいために踊るのである
また月をラグナと見なすと
6室支配の太陽が12室からアスペクトバックしたり
その太陽と対向した木星が5室へと逆行して高揚するような潜在力をもたらしたりと
熱意と奮闘を繰り返して身体と心の距離が狭まるように合致へと向かい
手探りな躍動がより更にリビドーを焚きつける相乗の反復を生んでいる
(月をラグナにすると木星は5室へ逆行して仮想のラージャ・ヨーガにもなって強力に働く)
特にこの月をラグナとした配置が彼女の優れたプレゼンスを物語っていると言える
5室へ逆行のラグナロードはヴァルゴッタマであり通常の配置としても高威力で
月自身も5室を支配してコンジャンクションの水星と二重のラージャ・ヨーガを起こし
10室に住んだラーフにディスポジターのラグナロードがアスペクトを返し
吉星化したラーフがケンドラ最高位の配置で10室の象意を体現し
その結果が11室の山羊座で生じた凶星優位な惑星集中である
その秘められた爆発力はあまりに凄まじく
ジョーティッシュという眼鏡をかけて眺めた彼女はまさに「才能のラジエーター」そのものだ
11室で二大凶星が強くなるのは「誉れに甘んじない克己心」と言える配置だが
そこに参加した金星は彼女のアートマ・カーラカであり
通常のラグナからではラージャ・ヨーガ・カーラカで吉意の結実となって働き
月から見ても3室(舞踏)を支配して土星との間にヴィーパリータ・ラージャ・ヨーガを起こし
その相克をヴァルゴッタマの木星が逆行の仮想アスペクトで緩やかな成長力に変え
風に吹かれてたゆたう雲のように絶えず動き姿を改め続ける熱意の運動にさせている
まさに魂がその湧き出ていく創意に身をよじらせて鼓動する姿のままに黎明なる尊さを示す
しかし彼女自身は
本来のラグナから2室目で5室支配の水星が減衰しラグナロードは12室で定座するため
その創意は全く自明ではなく尊大な慢心にも通じず真に【惟神】(かんながら) なのである
おそらく彼女が今のところ私が直に診た相手としては「最も高みにある方」である
ナヴァムシャのアートマ・カーラカは改めてその妙なる意志が刻まれた配置で
8室支配の太陽は4室で高揚してまたも逆行の木星にアスペクトされ吉意を帯び
その木星から始まる3連続の吉星は
高揚の星座へ逆行の木星に対し
ダルマ・カルマ・ラージャ・ヨーガの星座交換を起こした水星と金星で
金星は減衰しながら本来の強さを取り戻してシューバ・カルタリに守られ
その連なった配置は月から見て9室10室11室となる
煌めきで彩られた栄達の位階を昇っていく様を描いたかのようで
ナヴァムシャのこの配置そのものが躍り流れるように移ろう彼女を映した絵姿になっている
しかしてまた
彼女が提示した出生時刻に従ったシャスティアムシャは上記の通りであり
ラグナが受け持つ時間幅(彼女の場合は約80秒)に対し出生時刻はその最初のタイミングで
ほぼ間違いなく上記のチャートが彼女の正しいシャスティアムシャだと言える結果だった
彼女の生まれ持った意志をより如実に示した霊妙さとなっている配置であり
ラグナでラージャ・ヨーガの太陽は7室でまたラージャ・ヨーガの月と対向し
今生での出逢いが強い創意をもたらし彼女を突き動かしていく運命を表意している
そしてアートマ・カーラカの金星は9室蟹座に住むことで星座交換を果たし
今生の経験が10室の象意と結びついてドラマを帯びた人生となって開かれていく明示がある
吉星のアートマ・カーラカがラージャ・ヨーガの星座交換を起こしていたり
グル・チャンダラ・ヨーガの木星がガージャ・ケーサリを起こしていたり
6室牡羊座で凶星同士の強烈なニーチャ・バンガも起こしていたりと
彼女も崇高かつ大胆な学びを追い求めて今生へと巡ってきた魂である
これまでの占断実践では
ラーシやナヴァムシャで支障が強く出ている配置の持ち主が
実はとても優れたシャスティアムシャを備えていたという例もあったが
今回の彼女はその差異が最も少なく
生まれ持った意志の目途を誤らず進んで行くはずである
はずであったが──
彼女との当時のやり取りを振り返って存外な感心があった
彼女は意外にも「恋愛や婚期の運勢を知りたい」と私に相談してきたのである
その頃のダシャーは「金星-ラーフ期」に入って数ヶ月目の時局だった
アートマ・カーラカが金星なのはもちろんだが
金星が12室でディスポジターのラグナロードとコンジャンクションし
ラグナロードの土星は4室の表示体で「深層心理」を意味するマトゥリ・カーラカだった
金星はナヴァムシャで5室から5室目の9室で水星と星座交換して定座並みに強くなり
私と対話した時点で運勢上の突然変異的吉意が起こる「金星-ラーフ期」だったために
彼女は今生で心身がもたらす所感として恋愛感情に気心が向いていたのである
彼女ほど洗練された天晴れな運命の担い手であっても
ダシャーに従った即現実の生き方に流されるものなのかと私はしみじみ納得してしまった
(ラーシでは金星が強く傷つきナヴァムシャでは7室支配星の配置が劣悪で恋愛運は望めない)
彼女は来年の今頃までは「金星-ラーフ期」が続き
たまにそうした寄り道に目が向く伸び悩みの時を過ごさなくてはならないが
その後の「金星-木星期」はラーシで木星が金星と対向する位置へ逆行し
ナヴァムシャでも金星と木星は8室対9室の関係となり
その両方で木星は機能的凶星のため
風変りで手厳しい熟達者と彼女は出会いを果たし精進の道へと立ち戻るようである
(あるいはラーシで木星は2室を支配するので父親との間に葛藤があるという暗示だろうか)
コロナ禍もいよいよ今度こそ終息目前の今日この頃
彼女が円満な気概で持前のパフォーマンスを全開(全快)できる陽の目の時は間近だ
以上
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